アイスム
がんばる日も、がんばらない日も、あなたらしく。
アイスム食をテーマに展開しているWEBメディア「アイスム」は、読者のための特別企画として、料理研究家・コウケンテツさんをお招きしたイベントを開催しました。テーマは「料理を楽しむためのポジティブ変換」。アイスムで「聴くコラム」を連載中のフリーアナウンサー・枡田絵理奈さんに進行役を務めていただき、料理の「めんどくさい」との向き合い方や力を抜くための工夫、家事の分担などについてトークセッションを行いました。
コウケンテツさんと司会の枡田絵理奈さん
コウケンテツ僕にとって料理には3種類あって、お仕事としての料理と、趣味としての料理、そして毎日作らなきゃいけない家族のための料理です。趣味としての料理は楽しいんです。問題は、「作らなきゃいけない」日々の料理です。やらないといけないと思った途端に、「めんどくさい」と思ってしまいます。
でも、ちょっと見方を変えるだけで気持ちがラクになることも多いので、今日はそのようなお話を、日々ごはんづくりをしていらっしゃる皆さんと一緒にしていきたいと思います。
コウケンテツ毎日食べるごはんというのは、趣味の料理とは違うので大変ですよ。家族で食べるためのごはん作りは、正直に言うとしんどいです。子どもが3人いるのですが、最初の子が産まれた時は、離乳食を作ったり、年齢に合わせて食事を変化させていったりすることに、じっくりと向き合っていたのですけれど、2人目、3人目が生まれると、余りにもやるべきタスクが多すぎて、手が回らなくなってきました。「もう、ムリ…」と諦めるしかなかったです。
コウケンテツさんトークセッション
コウケンテツ僕も、梅干しとか味噌とからっきょうとかキムチなどは、かつてはすべて手作りしないといけないという気がしていました。調理済みのお惣菜や冷凍食品を買ったこともありませんでした。SNSを見るとていねいな暮らしをしている方が目に留まりますので、料理研究家という職業柄もあって、何から何まで自分でやらないといけないと思っていたんですよね。
でもある日、子ども達を連れて撮影のための食材を買いに行った時に、家族で食べる食事の材料を買うことをすっかり忘れてしまったことがあったのです。両手に大量の荷物を抱えて、子どもたちの手を引き、「あの混雑したスーパーで、夜ごはんと朝ごはんのための食材を買って、料理の準備をするのはもう無理だ」と一気に疲れが押し寄せた時、フラフラとお惣菜コーナーに足が吸い寄せられました。今まで、お惣菜を買ったことが一度もなかったのですが、極限状態のこの時、初めてお惣菜コーナーを見て、バラエティが豊富で斬新なメニューに驚きました。子どもたちも、おいしいと言ってたくさん食べましたし。
その日から、すべてを手作りしないといけないという呪縛から解き放たれて、できたものを買うという選択肢を持つことができました。すべてを手作りしないといけないと思い込んでいた自分と戦っていたんだ、ということに気づきました。外部からのプレッシャー、自分の理想像とのギャップがあると罪悪感を感じると思いますが、うまく捨て去っていただきたいと思います。
コウケンテツ日本とか韓国など東アジアの特徴なのですが、男性が外で稼いで、女性が家事を無償で行うという家庭が多いです。皆さん、パートナーとの役割分担を話し合っていますか?話し合いがうまくできないケースが多い気がします。我が家は、おいしいケーキを取り寄せて、夫婦で「コーヒートーク」という時間を設けています。そこで、家事を仕事のスケジュールに組み込んで、手分けしています。どう負担感を減らすことができるのか、メンタルヘルスを保てるのかを夫婦で話し合えるといいなと思います。おいしいケーキがあると、ケンカせずに話せるのでオススメですよ。
イベント後、コウケンテツさんが特別に書籍の販売とサイン会を実施してくださいました
コウケンテツ例えば、10分ほどの時間で調理できておいしいメニューがあります。鶏肉に醤油を塗ってグリルで焼くだけです。めちゃくちゃおいしいです。これを「〇〇鶏のグリル 香味醤油仕立て」と名付けて食卓に出してください。もう、本当に、「言い方」だけです。
「醤油を塗って焼いただけ」と卑下しないでください。日本の調味料、醤油、味噌、みりん、これらは世界中のシェフが羨ましがるような素晴らしい調味料です。だから、自信をもって、醤油を塗って焼いただけの料理を、堂々と出していただいていいんです。「醤油塗っただけ」「味噌で漬けただけ」と謙遜しないでください。ポジティブに考えると、どんどん肩の荷がおりると思います。
トークショーの様子はアイスムのYouTubeチャンネルにてアーカイブ動画をご覧いただけます。
コウケンテツさんへのインタビュー記事
「ポジティブ変換」と「やらない勇気」で、